角田出版
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角田出版 (つぬだ・しゅっぱん)
角田書店の出版部門が分離されたもの。当初は売れない文学作品や思想書などを扱っていたが、角田書店の常連客であった吹利の産んだ日本有数の文豪鷹村倚門(たかむら・いもん)の大作を出版することで売れ筋商品を獲得し、専門書中心の色が強いものの大出版社への道を歩んだ。
円本ブームにより予約制大量販売の妙味を知った各出版社が円本に乗り出すのを尻目に、高度な内容を通俗的に普及させるための角田新書、売れ筋の名作を大量生産する角田文庫などで知識人層の支持を着実に集めていった。
大正中期には書店は文雄に、出版は文雄の弟の功(いさお)に相続されて、兄弟の思想的違いからしだいに疎遠となっていた。
戦後になって貸し本ブームのなかで比較的質の良い作品を輩出した角田出版は、莫大な儲けこそ無かったものの安定した収入を獲得していた。倒産の危機に陥った角田書店の窮状を救うことができたのも、この安定した収入源があったためであったと言える。
しかしその後の放漫経営が祟り、質優先で価格を気にしなくなったために経営状態が悪化。漫画雑誌との連携を優先した方針によって何とか立て直したものの、日本の筆頭出版社であった往時ほどの勢力はもはやない。