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8,702 バイト追加 、 2014年5月12日 (月) 05:52
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HA20EP:「Not Unlike」<br />
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 鳴香奈:禁術の使い手。風紀委員<br />
<br />
<br />
 冬深まる12月。西生駒高校はこの季節生駒降しが吹き、自転車で通学し<br />
ている私には厳しい時期です。かといって、夏は夏で暑いので大変なのです<br />
が。<br />
<br />
 教室についてストーブを点け暖を取っていると、クラスメイト達が登校し<br />
てきます。クラスメイトの田中美奈絵さんがえらく沈んだ顔で入ってきます。<br />
隣のクラスの野中君と付き合っていて、普段は学内の風紀を乱すぎりぎりの<br />
行為ばっかりで注意しているのですが、これはこれで気になります。<br />
<br />
 香奈     :「どうしたの、美奈絵さん? えらく沈んだ表情をして?」<br />
 美奈絵    :「……和君が急に冷たくなって、今朝から態度が少し変<br />
        :だなぁと思ってたんだけど、今日の放課後一緒に買い物<br />
        :に行く約束も急に行かないとか言うんです。なにか嫌わ<br />
        :れる様なことしたのかなぁ……」<br />
 香奈     :「野中君も急用ができただけかもしれないじゃない?」<br />
 美奈絵    :「朝も待ち合わせの所にいないし、その約束したの、昨<br />
        :日の昼休みなんですよ。そのために展示会用の絵を昨日<br />
        :遅くまで残って描いていたのに」<br />
 香奈     :「そっか、そういや野中君は美術部だったわね。判った<br />
        :私が聞いてきてあげる。だから、沈んだ顔禁止っ!」<br />
<br />
<br />
 隣のクラスに行き、野中君を呼び出します。<br />
<br />
 香奈     :「野中君、ちょっとお話いいかな?」<br />
 野中     :「なんだい、鳴さん。今日は注意される様なことはして<br />
        :ないはずだぜ?」<br />
 香奈     :「確かにしてないわね。ちょっと美奈絵が落ち込んでい<br />
        :るのが気になって。今日の放課後なんか急用でもできた<br />
        :の? 美奈絵と出かける予定だったみたいなんだけど」<br />
 野中     :「いや、これといった急用はないよ」<br />
 香奈     :「じゃあ、どうして? 美奈絵のことが嫌いになったの?」<br />
 野中     :「いや、嫌いになったわけじゃないんだ。ただ、好きで<br />
        :もない。好きでもない女とわざわざ二人っきりで出かけ<br />
        :るのは変だろ」<br />
 香奈     :「別に他に好きな女の子が居なければ、良いじゃない。<br />
        :用事がなければ、今日の夕方美奈絵に付き合ってあげて<br />
        :よ。嫌いなわけじゃないんでしょ?」<br />
 野中     :「判ったよ。鳴さんには見逃してもらった恩もあるし。<br />
        :確かに好きな女もいないし、嫌いじゃないからな」<br />
<br />
 教室に戻り、美奈絵さんに「野中君、オッケーだって。また彼を振り向<br />
かせるために、頑張れっ」と伝え、一件落着です。好いた惚れたなんて、<br />
ちょっとしたきっかけなのですから、いい方向に転がることを期待する<br />
ばかりです。ただ、ちょっとだけ気にはなりました。<br />
 しかし最近校内を騒がせている妖鏡の仕業なら、好きの反対で嫌いに<br />
なるはずなのですが。嫌いじゃないというのはどういうことでしょう?<br />
<br />
<br />
 放課後風紀委員会が終わった後、美術室に向かいます。展示会が近い<br />
からか、普段はもう全員帰っている美術室で美術部員が一人絵を描いて<br />
います。<br />
<br />
 香奈     :「お邪魔します。ちょっと野中君のことでお聞きしたい<br />
        :んですけど、よろしいでしょうか?」<br />
 美術部員   :「はい、なんでしょ?」<br />
 香奈     :「野中君てなにか昨日変わったことありました?」<br />
 美術部員   :「いんや、特にないけど? 今日もガッコきとったやろ?」<br />
 香奈     :「ええ、来てました」<br />
 美術部員   :「何でも今日彼女と買い物行くために、おそぉまで絵描<br />
        :いとったくらいやのぉ」<br />
 香奈     :「何時くらいなんでしょうか?」<br />
 美術部員   :「いやぁ、知らへん。先帰ったからのぉ。わいは彼女お<br />
        :らへんから時間はたっぷりあるからな」<br />
 香奈     :「ちなみに、野中君の描いている絵はどこにあるんです<br />
        :か?」<br />
 美術部員   :「あぁ、準備室にしまっとるよ。ここは授業で使うから<br />
        :なぁ。終わったら各自準備室にしまうようにしとるんや」<br />
 香奈     :「見せてもらってもかまいませんか?」<br />
 美術部員   :「まぁ、ええよ。準備室の扉はあいとるから、勝手に入<br />
        :りや彼の絵は確か入り口付近においてあったで」<br />
<br />
 美術室から、準備室に向かう扉を開けます。授業で使う胸像や、画材がご<br />
ちゃごちゃとしています。鏡は入り口付近にある手洗いについている鏡くら<br />
いです。霊視をしても特に妖しい物は見えません。<br />
<br />
 野中君の絵も普通の静物画ですし、霊的にも妖しくありません。<br />
<br />
 冬なので校外はだいぶ暗くなってきました。そのとき、私の心にさざなみ<br />
の様な変化を感じました。<br />
<br />
 香奈     :「我が心変えることあたわず!」<br />
<br />
 慌てて禁術で、妖力に耐えます。私の禁術は言霊の力で、禁止することが<br />
できる術なのです。禁止するという言葉をいえないと使えない力ではあるの<br />
ですが。<br />
<br />
 慌てて外を見ると、外が暗くなった窓に私の姿が映っており、窓から強烈<br />
な妖気を感じます。<br />
<br />
 香奈     :「汝窓、心惑わすことことあたわず!」<br />
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 禁術にて、窓の妖力を打ち消します。ピシッという音と共に、カーテン<br />
の裏から、黒いゴミが落ちていくのが見えます。カーテンに隠して呪法で<br />
もかけていたのでしょう。やっぱり妖鏡の仕業です。心が逆になる呪法で<br />
もかけていたのでしょう。<br />
<br />
 では、なぜ、逆ではなかったのか?それも彼の絵を置いた位置で判りまし<br />
た。昨日夜遅くまで絵を描いた彼は、多分入り口の手洗い場の鏡を見たので<br />
しょう。鏡に映った窓を見たために、「好き⇔好きじゃない⇔嫌いじゃない」<br />
となったわけです。<br />
<br />
 次の日、今度は嬉しそうに登校してくる美奈絵さんの姿がありました。<br />
<br />
 美奈絵    :「香奈さん、ありがとう。昨日和君がやっぱり私のこと<br />
        :好きって言ってくれたの。香奈さんのおかげよ」<br />
 香奈     :「おめでとう。だけど、……校内で風紀を乱すのは禁止っ!<br />
        :だからね」<br />

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