大水の祓

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大水の祓

穢れを水笹で祓いましょう。

 いくつもの災害を予知し、注目を集めた照真教の巫女が言う。生きるうちにこびりついていく幾多もの穢れ、それこそが、病や被災の元となる、と。昔は穢れを定期的に落とす習慣があったのに、今は誰もしない。危険です。私が落としましょう。——穏健な、内省的修行を主としていたそれまでの活動とはうってかわって、短絡的利益的な活動内容となった新興宗教団。そして、水を使った活動。吹利の諸機関は警戒心を強めた。そして予告された<大祓>。何をもたらす儀式なのか。

霞ヶ池の闇

キャラクター

  • 片桐壮平 参加してみたい所存。一度会ってるし。
  • 真越誠太郎 チョイ役のスパイスのようなもの。境遇似てたので。

メモ

  • 8月中、遅くとも9月には終わらせたい所存。
  • イメージセンテンスは、しばらく動いていなかった期間の補完説明をメインにしてますが、ラストへの布石も打っていきます。ある程度の分量になったらログをMLに流していきます。
  • 真乃は現在、半分ほど水の怪となっています。進行を遅らせることはできますが、必ず死にます。
  • M∴F∴Cのメンバーは半分近く減っています。
  • 漣は、照真教が<水>を手に入れる直前に協力体制を解除したことになっています。
  • 照真教は信者の拡大路線をとっており、当局から目をつけられています。
  • ぼちぼちまきにかかります(9/1)。

イメージセンテンス

<溶解>
 くにちゃんが照真教をやめろ、と言ってきた。ありえない。もう、私はここ
でしか生きられないのに。騙されてる、だって。おかしいわ。私を騙してもな
んの利益もないのに。恵まれているくにちゃんにはわからない。私と違ってあ
いつにひどいことされなかったし、不思議な力だって持っている。癌にだって
かかっていない。
 言えば納得してくれるかしら。でも、きっとくにちゃんは悲しむ。くにちゃ
んが悲しむ顔は見たくない。私はくにちゃんが好きだから。だから、まともじ
ゃない、だなんて言わないで。
 私の爪がくにちゃんの肩に食い込む。
 いっそ、いま、ここで。
<夢鏡>
「当麻め、売ったな」
 <護法>が毒づいた。
「いや、漣はなにも言うとらんよ」
「じゃあ読み抜けか。どっちにしろ最後の最後でどじりやがって」
「あー、まあとりあえず署の方で話を聞かせてもらえんかのう。おたくらが『あ
の』施設で『なにを』しとったんか気になってのう」
 照真教の避難所であるマンションには、零課の刑事が踏み込んでいた。テレポ
ートで一瞬にして中に入り込んだのだ。真乃はダイニングリビングの奥に座って
いた。うつむいて、小さな洗盤の水を掬っている真乃の顔は、前髪で隠れて見え
ない。
「わかりました。指示をしたのはすべて私ですので、私だけがうかがいましょ
う」
 センミツが如才なく請合う。
「いや、嬢ちゃんにも話を聞きたいんじゃがのう」
 ここでセンミツだけ引っ張っても意味はない。片桐はセンミツらの後ろで端
座する真乃に呼びかけた。
「のう嬢ちゃん、一度デートしてくれたよしみで、ちょいと話をしてもらえん
か」
「刑部久仁子」
 ふいに真乃が前を向く。「あなたの姉さんはすでに救われています。あなた
だけが認めようとしないのです」
 雪解け水のような声だった。その清冽さに片桐の総身が粟立つ。振るえるべ
き魂は置いてきた。置いてきたのにこれだ。細胞が真乃の声を喜んでいる。
 刑部にも対策はさせた。目と耳を封じている。テレポータとしての絶対感覚
を持つ彼女ならなくてもなんとかなる器官だ。
「嬢ちゃんの声は届かんよ」
 片桐は一歩間合いをつめて呼びかける。その声に、真乃が片桐を見た。
 泉のような瞳だった。カーテンを閉め切った薄暗いマンションで、真乃の周
りだけが、プールの底から水面を見るときのような柔らかい光に満ちていた。
片桐は魂を置いてきたことを少し残念に思いはじめていた。
「ではあなたから伝えてください。彼女も救われるべきなのです。あたしの声
で伝えてあげたかったけど」
「嬢ちゃん、あんた……」
「センミツ、あなたはこの先、二度とあたしを見ることはない」
「はい、カガミさま」
「長い間ご苦労でした。護法も。あたしはみんなと一緒にいたかったのに」
「嬢ちゃん、逃げられんぞ。転移防御という技があってな」
「ギリちゃん。あたしはここを出て行くわけじゃないのう。あなたの未来にあ
たしがいなくなるだけなのう」
 あの日の笑顔で。
 溶けるように微笑んで。
 あの日と同じようにわずかな悲しみをたたえて。
 真乃が、消えた。
 ごく自然に。初めから誰もいなかったかのように。異変を感じた刑部が悲鳴
をあげる。
「ギリさん、鹿神が消えました! そんな、時空震も特異点もまったく生じな
いなんてありえない……!」
「カガミさまの予知は絶対です」
 センミツが飲みかけのミネラルウォータの瓶を護法に渡しながら微笑む。カ
ナリヤを食って満足したイタチの顔に似ていた。
「さてどうしましょう。一応あなたたちを撃退して彼女ともどももう一度潜伏
するという選択肢はあるんですが」
<鍵>
「ないよ。まったく。なにも」
「うーむ」
 確保した信者達の精神探査をした植草が否定する。信者らには「大水の祓」
とやらがいつ行われるかの記憶はないというのだ。
「後催眠とかいうのは?」
「あのね、僕はプロなの。後催眠も暗示も精神操作も、とにかく彼らをどこか
へ誘導する心理汚染は一切されてません」
「すまんすまん……とすると、一体どうやって儀式に呼び出すんじゃろうか」
「例の言霊使いがラジオ放送でやるんじゃないかって、山岸さん達が言ってた
けど、いま使い物にならないんだよねえ?」
<溶ける記憶>
「まさかあの水は」
「記憶を……溶かす……カガミさまに会えない以上、どうでもいい……これで
あんたらに手がかりは、ない」

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